神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

令和の時代を迎えるにあたって

先日、救急医学の領域でご高名な岩田充永の講義をお聞きする機会がありました。
先生のお話では昨今の高齢者の救急患者の特徴を一言でいえば、「あいまいさ」だと
いうことです。例えばこの数日急にせん妄状態となり夜中に騒ぐ高齢者が、救急外来
に搬送されたが、よく調べてみると実は心筋梗塞を起こしていたということがあった
そうです。何故せん妄状態になったかと言うと、心筋梗塞で脳の血流が低下したことが
原因と考えられます。脳の血流が低下すれば、人間は興奮状態になりうると言うことを
我々、医療者のみならずご高齢の方の介護をしておられる、ご家族は知っておく必要が
あります。このようにご高齢で急に重篤な状態となられた場合、その病気に典型的な
症状をきたさないことが良くあります。高齢者日常的に良く見られる肺炎でも若年者の
ように高い熱をきたさないことがよくあります。急に元気がなくなった、ご飯を食べら
れなくなったが調べてみると、実は肺炎だったということがあります。高齢者
の急病患者の病気は、症状、身体所見を含め、あいまいであり、加齢による身体能力の
衰えなど、いくつもの要素が複雑にからんでおり、なかなか一筋縄でいかないと
感じるようになってきました。
 私も含めて医師は患者さんを診察し、その時点である程度、病名の見当がつくと
その病気の解決に向かって一散に走ることは得意ですが、いざその時点で病名、
即ちその問題の回答が見えない状態では、思考停止に陥る傾向があると思います。
先日も当院で自宅で介護をしておられる方でこのような例がありました。
高熱、確か38度以上だったかと思いますが、往診してみますと診察所見では
何か重篤な感染症が推定されました。後で病院で精査していただいたところ、
腎盂腎炎という尿路の感染であることが分かりました。病状としては入院の適応ですが、
物事はそう簡単ではありません。病院に入院させたとしても、感染がコントロールされた後、
入院をさせることにより、その方の日常生活はある程度低下することを予測する必要があります。
入院して食事摂取が低下したとき、あるいはそれまでトイレに自力で行っていたのに
歩けなくなったときどうするか。退院後の自宅の環境をどうするのか、あるいはお家の方の
負担を減らすため、デイケアは週に何回ぐらい行っていただければ良いかなど、
考えないといけないことはいくらでもあります。
 このように高齢の方の問題は山積しており、開業医の守備範囲はどんどん広がっています。
思考停止に陥っている暇はありません。しかし今後、ご高齢の方の「あいまい」な問題に、
真摯に向き合い解を求め続ける姿勢が、患者さんや、ひいてはご家族の満足度を高めるものと信じて疑いません。
 時代は平成から令和に変わり、医師としても思考の転換が求められていると思います。
従来の考え方に留まらず、時代の変化に対応する必要があります。ドイツにこんな言葉があります。
「勇気を持って未来を、感謝をもって過去を見よ」開業以来、平成の時代に頂いた皆さまの
ご厚情に感謝しつつ、新しい時代に対応すべく自身の意識改革に取り組んでいきたいと思います。

カテゴリー:お知らせ   |   2019年4月30日

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