循環器内科医は外来診察で何を診ないといけないのか

循環器でも心電図や心臓超音波などの検査だけではなく、診察も非常に大切だということをお話したいと思います。研修医のころは米国ゆずりのphysical examination(理学所見)が全盛であり、留学から帰られた先生が心臓の診察の仕方について熱く語っておられたことを思い出します。ただその後心臓超音波が発達したため、理学所見の重要性がやや軽視されるようになってしまいました。
医者になったころはリウマチ性の心臓弁膜症が多かった時期ですので、聴診して心臓弁膜症の雑音を見落とさないことが重要視されました。最近はリウマチによる弁膜症は少なくなりましたが、先月も述べましたように加齢による大動脈弁狭窄症が増えております。この病気は雑音が強いほど重症の可能性が高く、聴診の時には聴きおとさないよう充分に注意をしています。
聴診以外にも大事なことがあります。まず患者さんの全体を診る視診というのも大切です。例えば先日も家族性に非常にコレステロールが高くなる家族性高コレステロール血症の方が来られましたが、良く見ますと両手の甲の皮下に黄色のごつごつした塊がありました。これは黄色腫といい特徴的な所見です。この病気は非常に若い方の狭心症、心筋梗塞など冠動脈疾患の原因になるため決して見逃してはいけない病気とされます。
視診では頚静脈の状態を診ることで、いろいろな情報が得られます。例えば患者さんが座った時、頚静脈の拍動が鎖骨より上に見られたら心不全(心臓が弱ってる状態)ではないかと見当がつきます。また聴診や視診以外でも触診と言って心臓の拍動を触ることで心臓が大きいかどうかも分かります。例えば心臓の尖端の拍動が左乳頭より外側に触れると、胸部レントゲンを撮らなくても心臓が大きいと見当をつけることができます。
以上の説明で循環器内科医にも診察所見をしっかりとることが重要であることがお分かりいただけたかと思います。確かに心電図、心臓超音波、胸部レントゲンなどは循環器内科において必要欠くべからざる検査であることは間違いありません。ただ昨今の厳しい医療経済を考えると、すべての患者さんにこのような検査をするわけにはいきません。日々の診療では、まず診察を充分行い、どうしても必要な患者さんに絞って検査をするよう努めています。