フレイル(老人の脆弱性)について

最近ご高齢の方の諸問題を考えるときに、「フレイル」という言葉がよくでてきますのでご説明させていただきます。フレイルとは加齢にともなう臓器の機能の変化や予備能力の低下により健康障害にたいする脆弱性が増加した状態を言います。フレイル高齢者では施設入所や転倒などによる入院の頻度が高く、死亡率が高いことが知られています。手術などを受けるときも合併症や死亡の危険性が増加します。ちなみに75歳以上の高齢者で要介護の状態となる原因の第一位はフレイルであるとされています。
このようにフレイルには加齢の影響が強いと考えられていますが、そのまま衰えてゆくというのではなく、フレイルとは再び元気になる可能性を含んだ言葉と考えられています。すなわちフレイルになった高齢者を早期に発見し、適切に介入することにより、生活機能の維持、向上をはかることができると考えられています。
フレイルの定義としては1)年間で4-5Kgの体重減少 2)疲れやすくなった 3)握力の低下 4)歩行スピードの低下 5)身体の活動性の低下の5つがあります。この中で体重の減少は栄養状態の低下を表しておりフレイルの患者さんを発見するのに有用です。さらに握力や歩行速度の低下は身体機能の低下を表しており男性で握力26Kg、女性で18Kg、あるいは歩行速度が0.8m/秒以下(4m歩くのに5秒以上かかる)の方はフレイルを疑い精査する必要があります。疲れやすくなったとは、特に原因もないのになんとなくだるいなどの状態を指します。また活動性の低下とは1日中部屋で座っているような方をイメージしていただければよいと思います。体重が減ってきた、元気がなくなった、歩くのが遅くなったなどのことを年のせいと軽く考えてはいけません。
最後にフレイルに対する介入法について説明します。フレイルに対する介入としては栄養と運動が2本柱となります。まず栄養ですが十分な蛋白質の摂取が重要です。具体的には1日で体重1Kg当たり1gの蛋白質の摂取が必要とされています。食事が充分に摂取できず、体重減少がある方には経腸栄養剤などを食事に追加することもあり有効です。これらの経腸栄養剤は蛋白質の含量が高く、三大栄養素及びビタミン、ミネラル、微量元素をバランスよく配合しています。またビタミンDの内服は転倒を予防し、筋力を上昇させることが知られています。ただし血中のカルシウム濃度を上昇させることがあり、心臓の薬であるジギタリスと併用したとき強い副作用がでることがありますので、服用する時は事前にかかりつけの先生にご相談下さい。
運動の効果としては、運動をすることにより転倒しにくくなり、歩く距離が伸びるなど生活機能に良い影響を与えることが知られています。ただ無理は禁物です。フレイルの方の運動指導では軽い運動から始めて、ゆっくりと行うということが大切です。最初はほんの5分程度の歩行を1日2回程度でよいので、少しずつ運動する時間を増やしていくようにしています
高齢社会になりフレイルはますます大きな問題となる可能性があります。以上の話で何かご自分で心当たりがありましたら、ご遠慮なくご相談下さい。