最近の循環器疾患の様変わりー心不全

心不全とは心機能が低下するため運動すると息苦しくなったり、全身が浮腫んだりする病気です。心不全は種々の原因で急に増悪することがありますが、その悪化する原因も変わってきているように思います。私が医者になったころは心不全の悪化原因といえば感染が多くを占めていました。患者は肺炎などの感染症が引き金となり、急に心不全が悪化して入院になることが多く見られました。現在ではこのように感染が原因で担ぎ込まれてくることは少なくなったように感じます。これはおそらく心不全の治療についてガイドラインが整備され、患者さんが普段から適切に治療されているためではないかと思います。例えば、心不全の患者さんに対して、循環器専門医であれば利尿剤、β遮断剤などの薬を処方し、適切に治療しているため、肺炎などの感染だけでは容易に病気が悪化しなくなったためではないかと考えられます。
 今でも心不全の悪化は見られますが、悪化する兆候は昔よりゆっくり忍び寄ってきます。たとえばいつも通院してこられる患者さんの心不全の検査値が悪くなっており、前回より体重が2kgも増えているため、何か心当たりがあるかと聞くと、何もないと言われます。しかし腑に落ちないのでさらに聞くと、ご本人はうどんが好きでよく食べるとのことで、うどんの汁まで飲んでいるとのことです。うどんの塩分は汁に大部分の塩分が含まれているので、飲まないように言ったのにと言いたいのをこらえ、うどんは少なめに汁は飲まないようにと何度も説明してやっと分かっていただきました。現在では心不全が悪くなる原因は前述しましたように、普段から知らず知らずのうちに塩分を過剰摂取するという、患者さんの生活習慣の中に存在することが多くなっているように思われます。そのためお薬をしっかり使うだけでなく、患者さんとよく話をして塩分摂取など生活習慣に問題のある患者さんには、売り返し話をし、時にはありがた迷惑と思われるぐらい注意を喚起するよう心がけています。
 以上、今と昔の循環器を比較しますと、以前は急性の病気が多く、勝負が早いため迅速な対応が求められました。しかし最近では循環器の相手するものは生活習慣の占める割合が多くなりました。生活習慣は人生をどのように生きたいか、というような患者さんの価値観などに深くかかわっています。これからは循環器疾患といえども患者さんの人生観、価値観などに踏み込んだ、いわばスピリチュアルなものに対する気配りが一層求められているように思います。