神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

デルタ株の蔓延と新型コロナワクチン

令和3年8月末現在、兵庫県には緊急事態宣言が発出されており新型コロナウイルスの新規陽性者の数は、増加からまだまだ減少に転じておりません。この新規陽性者増加の原因はデルタ株による感染の増加によるものとされています。神戸市のデータでも直近(8/16-8/22)のPCR検査におけるゲノム解析の結果ではデルタ株の割合が87.2%と検出されるウイルスがデルタ株に置き換わっている状況です。デルタ株は圧倒的に感染性が高く、ワクチン未接種者を狙い撃ちし、未接種者の感染者が増加していることが新規陽性者の増加に関与しているとされています。
 今回、保険医協会のZoom研究会で名古屋検疫所 中部空港検疫所支所 守屋章成の新型コロナワクチンについてのご講演を視聴する機会がありましたので、講義のポイントを皆様と共有させて頂きたいと思います。開業医が守屋先生のように100本以上のコロナに関する最新の論文を読み評価するようなことは不可能です。ただ専門家に教えていただいた内容を医師としての感性というフィルターを通し、一般の方々に嚙み砕いて伝えることは開業医の大事な仕事と考えます。
デルタ株が蔓延する以前のデータでは新型コロナワクチンによる感染予防効果は95%とされています。ここで問題は新型コロナワクチンがデルタ株に効くのかということです。結論から申し上げますと、デルタ株においても接種により確実に感染確率が下がるとされています。大阪府のデータでも人口10万人当たりの新規陽性者数は8/2-8/15において未接種者が256.1であるのに比し、2回接種者では何と10.4であり、ワクチン接種者において新規陽性者数は少なくなっております。残念ながらデルタ株の圧倒的な感染力から、ワクチン接種後感染(ブレークスルー感染)を完全に防ぎきることは困難かもしれないが、重症化はある程度防ぐとされています。以上のことより現在のデルタ株蔓延の状況下においても、すべての年代においてワクチン接種を推し進める必要があると考えられます。若年者においても感染による重症化リスクは少ないが決して「ゼロ」ではありません。9月に夏休みが明ければ学校での感染爆発、家庭内感染の恐れもあります。守屋先生の言葉をお借りしますと、若年者の接種を先送りにする理由は第5波/デルタにより失われたと考えられます。
最後にワクチンの副反応について述べます。ワクチン接種後の副反応として局所反応として注射部位の疼痛や全身反応として発熱などが挙げられます。当院においても上記の副反応を訴え、電話での相談や受診をされた方がおられましたが、幸いなことに全例このような症状は数日で軽快しております。ワクチン接種後の重症のアレルギー反応の頻度は、ファイザーワクチンでは100万接種中5.0件であり非常に稀です。また同じくファイザーワクチンで100万接種中1.1件心臓の炎症(心筋炎)が起こるとされていますが、報告によればすべて重篤な状態とならず軽快したとのことです。このように統計的に見れば、新型コロナワクチンによる重篤な副反応の頻度は非常に稀です。ただそうは言っても自分のこととして考えれば、初めてのことは怖いと思うのも人情です。ただ今の時代は生活していく上で、リスクを「ゼロ」にすることは不可能です。今やデルタ株の蔓延と感染の爆発により、我々は生きていく上でリスクを選ばないといけない状況となりました。コロナに感染すれば入院するなどの状態に到らなくても、回復後に味覚障害や呼吸困難などの後遺症に悩まされる方もおられます。ご家族や友人への感染も心配です。コロナに感染するリスクと、ワクチンによる重篤な副反応のどちらのリスクを重視するかは、是非皆様にご自分のこととしてお考えいただきたいと思います。
最後にコロナのワクチンの話ばかりをしていましたが、今シーズンのインフルエンザの流行についても注意する必要があります。昨シーズン理由はわかりませんが、インフルエンザの流行はほとんど起こりませんでした。当院においても検査ではっきりとインフルエンザと確認できた方は1名のみでした。しかしながら守屋先生のお話では昨シーズン流行が起こらなかったことにより、各人の抗体の低下が予想され、インフルエンザの流行が今シーズン起こる可能性があるとのことです。したがって今シーズンのインフルエンザは大変重要ということになります。以上、デルタ株の蔓延の時期のコロナワクチン接種の意義につき説明させていただきました。ご不明の点がありましたら、また診察の際にお尋ねください。9月になり新型コロナ検査新規陽性者の数は、ようやく減少に転じたようにみられますが、まだまだ油断はできません。陽性者が少なくなれば気のゆるみがおこり、普段の感染対策がおろそかとなり、また感染の爆発につながりません。皆様も咳エチケット、ソーシャルディスタンスなどの感染対策を、ひき続き徹底していただくようお願いいたします。

カテゴリー:お知らせ   |   2021年9月3日

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