こころを遣う

 世の中が豊かになり、医療においても全国どこでもそれなりのレベルの医療が
受けられるようになっています。また医学の進歩により患者さんの治療の選択肢も
広がっています。ただこのように豊富な医療サービスがあふれるようになっても、
患者さんの医療に対する満足度が上がっているとは思えません。心理学者である
河合隼雄さんは、豊かになるとどうしても物事をお金や物で解決しようとして、
肝心のこころを遣うことがおろそかになってしまうことが、このような不満の原因では
ないかとしています。例えば昔なら病院の待合室で皆が集まりどこの先生がいいとか
情報収集に余念がありませんでした。また受付と世間話のひとつもし、少しでも満足のいく
医療を受けるために皆さん努力をしておられたように思います。年配の患者さんから、
いつも大変お世話になっていますと、それこそ、こぼれるような笑顔であいさつをいただき、
こちらが恐縮してしまうことがあります。やはり年配の方々はプロに最大の能力を
発揮させるには、プロの専門技能を尊重する、はっきりいえばおだてるに限るということを
経験則としてご存知なようです。
昔と違って医療の選択肢が広がり、何でも選べるようになったことは、必ずしも幸せとも
いえません。人間関係が希薄となり、気軽に相談することができないため、個々の患者さんが、
何を選んでどうすれば良いか、分からなくなっているのが現状ではないでしょうか。
今後、患者さんの満足を高めるためには、医療機関関係者と患者さんの気持ちの交流、
こころを遣うことが今まで以上に重要になってきたと思います。当院でも患者さんがどんなことでも、
気楽に相談できるような環境を整えるよう努めています。