技術や知識とともに医者に必要なもの
以前に勤務していた病院の理事長が、医療はエンターテイメントだと言っていました。医者はちゃんと仕事ができて当たり前、その上で患者さんを楽しませ、満足を与えないといけないと言うのが持論でした。その頃は、何をふざけたことを言っているんだろうと、あまり同意できませんでしたが、最近開業して長くなり、理事長の言っていた意味がだんだん分かってきました。
当院のお隣の小林整形外科クリニックの小林先生は整形外科としての技術の確かさはもちろんのことですがホームページや各種メディアでの情報発信に力を注いでおられます。また医院でも青いスクラブ(襟のない診察医)を着て颯爽と診察しておられます。やはり小林先生も医療のエンターテイメント性がよく分かっておられると思いますし、患者さんへの情報発信という面では見習う点が多いと思います。
小林整形外科の例を挙げましたが、当院でも患者さんの満足度を上げるために、それなりに毎日工夫をしています。そもそも医院の診察室という空間は一種の舞台のようなものではないかと思います。その空間で医者と患者がそれぞれ医者なら医者、患者なら患者の役割を演じているというように考えることができます。そこは舞台ですから白衣という衣装もいります。昔白衣を着ないお医者さんもおられましたが、どうも自分にはすっきりしません。小林先生はカッコいいスクラブで、現代的な医師を演じておられますし、私は白衣で昔ながらのお医者さんを演じているわけです。
昔から成功している人にはいつも一定のパターンがあります。BOØWYというロックグループがありましたが、このグループではボーカル意外はステージでしゃべってはいけないというルールがあったそうです。ですからボーカルの氷室京介が歌っているときも、ドラムはひたすらドラムを叩き、ベースは鬼がわらみたいな顔をしてひたすらベースを弾いていました。あの布袋 寅泰でもBOØWYのときは、ステージではギター演奏に徹していました。このスタイルを押し通してBOØWYは確固たる地位を築きました。
診察にもこのような決まったスタイルが必要だと思います。私はワンパターンと言われようとも患者さんの説明などで、成功したパターンは何度でも繰り返し使うようにしています。例えばノロウイルス胃腸炎やインフルエンザの患者説明でも、何度でも同じ説明をしています。ブロードウエイでも一度当ったら、同じ芝居を何カ月も上演することが多いそうですが、当ったパターンは繰り返し使うというのが鉄則で、何度も同じことをすることに照れないことがプロとして大事だと思います。
以上、とりとめのない話になりましたが、もはや医者は医療だけをしているだけで良いという時代ではありません。やはり医院においても患者さんとのコミュニケーションを円滑にするため、医療のエンターテイメント性という側面を重視する必要があると思います。
カテゴリー:院長のひとりごと | 2018年4月3日