たかが風邪されど風邪
今年も年末になり寒くなるにつれて、風邪症状で当院に受診される方が多くなりました。風邪の定義ですが、一般的には、咳、のどいた、鼻水を伴うウイルス性急性上気道炎とされています。咳、のどいた、鼻水などの症状をきたす病気の総称を急性上気道炎といいます。風邪はウイルス疾患ですから、ある程度日数が経てば自然に治るのが普通です。
ただ自然に治るからといって、何もしなくてもいいというわけではありません。風邪による症状では日常生活が大変阻害されます。そのためこれらの症状に対する治療、症状を治めるための治療、これを専門用語で対症療法といいますが、これも医師の大切な仕事です。風邪の対症療法を行うときに患者さんによく説明するのですが、「風邪はウイルス疾患ですから、いまのところインフルエンザ以外にウイルス疾患である風邪に効く薬はありません。ただ薬で風邪の不快な症状を抑えることにより、よく眠れるようになり、食事をしっかり摂れ、体が元気になり結果として、ご自分の抵抗力で風邪を治すことが早くなると考えて、お薬を出します」と説明しています。以下、それぞれの症状に対する治療について説明させていただきます。
のどの痛みに対してはNSAIDという解熱鎮痛剤を処方します。ただご高齢の方には腎機能が低下している方が多いため、アセトアミノフェンという腎機能に影響を及ぼさない薬を処方しています。また鼻水に関しては抗ヒスタミン剤という薬を処方することが多いですが、抗ヒスタミン剤の副作用として、強い眠気や、尿が出にくくなるなどの副作用が起こることがありますので、特に高齢の方には、抗ヒスタミン剤でも、より副作用の出にくい薬を選ぶなど充分に注意しています。咳は体力を消耗するとことが知られています。具体的には1回の咳で2キロカロリー消費するとされています。そのため一日中咳が続いていれば、消費エネルギーは簡単に1000キロカロリーを超えてしまいます。健康な成人の1日の消費カロリーが2000キロカロリーですから、咳による体力消耗がいかに激しいかが分かります。その他に、咳をすることにより、気道の他の部位に炎症が広がる可能性もあります。咳を止めることも非常に大切なため、咳がひどい方には咳止めをお出しするようにしています。
少し話が変わりますが、高齢者は若年者に比べて急性上気道炎(この場合、風邪と考えていただいて結構です)にかかる頻度が少ないことをご存じですか? ある報告では小児の気道感染罹患率は年間6-8回であるのに対し、60歳以上では約1回と年齢が高くなるに従い罹患率が低くなるとされています。このことから考えないといけないことは、ご高齢の方が風邪で受診した場合、必ずしも風邪ではない可能性があるということです。実際、風邪と言って受診された方で、診察してみると肺炎であったことがあります。風邪は万病のもとと言います。皆さまもたかが風邪と軽く考えず、早めの受診をお願い致します。
カテゴリー:お知らせ | 2019年11月24日