神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

ビタミンD欠乏は転倒の危険因子

この原稿を書いているときは1月下旬ですが、兵庫県に緊急事態宣言が出されております。この時期新型コロナ感染症が恐いからと、ご高齢の方を中心に外出をためらう方が多くなっております。ただいつも言っておりますが、新型コロナ感染症は多くは飛沫感染であり屋外において人との間隔が2m以上あれば飛沫感染の危険はなくマスクの必要もありません。また買い物などにおいても、マスク着用やこまめな手洗いを行えば感染の危険性はかなり低下します。後述しますように、最近ではむしろ自宅に閉じこもることによる健康への影響が懸念されます。この時期においても、なるべく1日1回は外出し戸外で運動されることをお勧めします。
 まず戸外での活動が少ない場合、睡眠に影響が出てきます。人は毎日太陽光を浴びることで自己の体内時計をリセットし睡眠のリズムを作ります。すなわち朝、日光を浴びて活動メードにスイッチが入り、暗くなると休息モードとなり眠りの準備に入ります。しかし昼間に充分、日光を浴びていないと体内時計がうまく働かず、夜暗くなっても寝付くことができず眠れないということがおきます。次に戸外で日光を浴びないことで起こる弊害としてビタミンD不足が挙げられます。ビタミンD不足と関係する病気として以前から骨粗しょう症という病気が知られていますが、最近ではビタミンD不足が転倒の危険因子となることが知られています(日本ビタミン学会)。
 血液中のビタミンDは、今では保険で簡単に測定することができます。ある研究では研究対象者の92.2%がビタミンD不足であったとしています。当院でも年配の方数例の方で測定してみましたが、全例ビタミンD不足の状態であり驚きました。私見ですがこれからは転倒したことがある方には全例に血液中ビタミンDを測定する必要があるのではと思います。最近、ビタミンD製剤を用いることにより転倒、骨折を防止できることが報告されており、その理由としてビタミンDが筋力を改善し歩行能力を維持するためではないかとされており、転倒とビタミンDの関係が注目されています。
最後にビタミンDをどのように補給するかという点につき説明いたします。この点は一般の方があまり知らないことですので詳しく説明します。体の中で作っているビタミンDの約9割は太陽光が皮膚に照射されることにより体内で作られています。すなわちビタミンDの欠乏が起こらないためには、充分に太陽光を浴びれば良いということになります。具体的には人が一日にビタミンDの必要量(10μg)を得るためには、昼の12時頃を基準とすれば、夏は15分、冬は30分日光を浴びる必要があります。骨の健康を保ち、転倒を防止するためには、日光を積極的に浴びるようにしてください。また施設の方や自宅で療養されておられる方も窓ガラス超しでかまいませんので、上記の時間、太陽光を浴びるよう介護される方にお願いいたします。ただし上記の時間をあまり超えて太陽光を浴びますと、日焼けなどの皮膚の障害が起こりますのでご注意ください。
またどうしても施設の方などで家屋の構造上、日光浴ができないという方には、ビタミンDのサプリメントをおすすめします。具体的には600から1000国際単位を1日1回服用してください。ただし服用により血液中のカルシウムが多くなったりすることがありますので、服用前にかかりつけの先生に必ずご相談ください。
どれくらい日光を浴びればよいかは季節、地域により異なります。どれくらい日光を浴びればよいか。またはこれ以上浴びると日焼けが起こるかということが簡単にわかる、便利なサイトがありますので紹介させていただきます。

ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報モバイル版|国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター

カテゴリー:お知らせ   |   2021年1月24日

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