神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

コロナ禍での高齢者のフレイルリスクの増加

先日、日医かかりつけ医の応用研修会に行ってまいりました。日曜日に朝から夕方まで缶詰め状態で結構きつかったですが、なかなか得るところも多い研修会でした。研修会の講義の中でフレイルについての項目がありましたので、皆さまに紹介したいと思います。これから述べることは、研修会のテキストの内容を参考にしております。
 日本人の平均寿命は2016年には男性で80.1歳、女性では87.1歳ですが、残念なことに健康寿命(元気に自立して日常生活を送ることができる期間)との差は男性で9年前後、女性ではなんと12年とされています。そして高齢者の健康寿命にフレイルが大きく関与しているとされています。フレイルとは高齢になり体の予備能力が低下し、ストレスに対する抵抗力が低下した状態であり、この状態を放置すると要介護状態となったり、命の危険を生じる可能性のある状態とされています。
フレイルの評価には以下の5つの基準があります。
1) 体重減少:この6か月で2kg以上体重が減っている
2) 筋力低下:握力の低下。固いペットボトルを開けることができない。
3) 歩行速度:信号を1回で渡りきることができない。
4) 身体活動:軽い運動やスポーツをしていない。
5) 疲労感:(この2週間)わけもなく疲れた感じがする。
この5項目のうち3つ以上思い当たる場合にはフレイルの可能性があるため、早急に対処する必要があります。フレイル予防のための3つの柱として、栄養、身体活動、社会参加の3つがあります。栄養については別の機会に述べるとして、今回は残りの2つについて述べます。まず身体活動ですがコロナ禍でどうしても気分が内向きとなり、特にご高齢の方は家にこもりがちで何日も外出しないと言う方がおられます。こういう場合には、ちょっとした買い物でもかまいません、出来れば一日一回は外出してくださいと指導しています。また散歩のときなど万歩計で歩数を測るとやる気が出てくると思います。
また最後に社会参加について述べます。フレイルは体の機能低下と思われるかもしれませんが、社会性の低下は身体のフレイルの引き金となることが知られています。例えば、外出、人付き合いがなくなると、独りで食べるごはんが美味しくないため、どうしても食事を簡単に済ませてしまう。そうすると体重が減り栄養障害となり、結果的に身体的機能が低下するなどの悪循環となります。ある文献によれば文化活動(趣味のサークル等)や地域活動(いわゆるお付き合い)などは運動習慣と同様にフレイル予防の効果があるとされております。どうかご年配の皆様につきましては、新型コロナワクチンの接種を終えられた方も多いと思いますので、マスクなどの感染対策を十分講じたうえでできるだけ外出の頻度を増やしてください。よく病は気からなどと言いますが、フレイルは気からとも言えると思います。地域での催しものや趣味のサークルなど気が向けば是非参加してみてください。たまにはお友達とごはんを食べてみてください。このように社会とかかわることがフレイル予防に重要です。

カテゴリー:お知らせ   |   2021年7月24日

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