新型コロナ急性期の治療 当院の場合
発熱外来をしているため当院でも新型コロナ感染症の患者さんを診断し、初期(急性期)の治療を行うことが多くなってきました。ここで新型コロナ感染症に対して当院が使用している薬について述べてみたいと思います。ただし感染症の専門家ではありませんので、あくまでも現在まで患者さんを診てきた経験での個人の感想であることにご留意ください。
まず新型コロナ感染症の治療薬のうち当院で使用可能なものはラゲブリオという内服薬のみです。この薬は臨床試験で重症化を防ぐとの結果がでており、適応があればできるだけ早期に投薬するように努めています。ただしこの薬処方には糖尿病や高血圧など一定の基礎疾患がないと処方できず、17歳以下には投与できないなど多くの制約があります。当院での使用経験で投与後、早期に解熱した患者さんもおられますので、処方可能な方があれば積極的に投与するようにしています。
幸いなことに流行初期に比較して新型コロナによる死亡は減少しております。当院での経験でもほとんどの患者さんは軽症に分類されます。」もちろんお元気で症状の軽い方も多いですが、軽症でもなかなか下がらない発熱や強い咽頭痛などの症状が強い方も見られる方もあり、これらの症状に対するしっかりとした対症療法が必要です。
まず発熱ですが高齢の方で39度以上の発熱が4-5日も持続した方がおられました。この方はインフルエンザなど高熱を伴う風邪のときに使う、麻黄湯というくすりやアセトアミノフェン(解熱薬)を用いても熱がひかず治療に難渋しました。高齢の方で高熱が長期間持続することは、食欲低下を生じ全身状態の悪化をまねく可能性があります。このような場合、解熱剤を漫然と投与するのではなく発熱に積極的に介入する必要があると考えます。上述した患者さんは麻黄湯から小柴胡湯加桔梗石膏という薬に変更し解熱いたしました。他に何人か麻黄湯で解熱せずに小柴胡湯加桔梗石膏で解熱した方がおられ、当院では発熱のある方には最初から小柴胡湯加桔梗石膏を使っております。
次に最近の患者さんの中で強い喉の痛みを訴えられる方もおられます。このような場合にはアセトアミノフェンを4時間程度の間隔をおいて頻回に投与するなどの治療が必要です。また前述した小柴胡湯加桔梗石膏には桔梗という生薬が入っており、桔梗はのどの痛みに有効なため、解熱と喉の痛みの緩和を期待することができます。
最後に東京都で新型コロナ感染症の後遺症を多く診ておられる、ヒラハタクリニックの平端先生の講演から引用させていただきます。新型コロナ感染症から2か月の間は決して無理をせず自身の活動を注意深くコントロールする必要があるとのことです。この時期に一番注意しなければいけない症状として、軽い労作や、ストレスのあと一定期間をおいて強い倦怠感のある場合は要注意とのことです。このような症状を放置すると慢性疲労症候群を発症し寝たきりの原因になることもあります。このような症状に心当たりがある場合には是非ご相談ください、当院にて精査の上、必要があれば専門医療機関を紹介させていただきます。
カテゴリー:お知らせ | 2022年5月1日