高血圧は何故治療しないといけないの?
一般的に診察室血圧が140/90mmHg以上であり、家庭血圧が135/85mmHg以上であれば高血圧と診断されます。高血圧は放置すると血管内の圧力が上昇すれば血管を傷めることになり脳卒中、心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こすリスクが高くなるため治療が必要です。さらに高血圧は認知症のリスクになるとされています。以上のような理由から患者さんには高血圧は治療しなければならないといつも説明しています。ただこのような説明だけでは患者さんの理解を得ることが困難です。ましてや降圧目標として血圧コントロールは診察室血圧を130/80mmHg,家庭血圧を125/75mmHg未満にするように指導しても、かなりの方がその降圧目標に到達していないのが現状です。当院にもたくさんの高血圧の患者さんが来られますが、高血圧コントロールをしていると、こちらの指導が患者さんの心に充分届いていないような印象を受けることがあります。例えばいつも食事に醤油をかけないようにしてくださいとか、ラーメン、うどんを食べるときは汁を残してください、あるいは一日30分の有酸素運動をしてください、タバコは血圧に良くないですよ、禁煙に努めてください、等々説明しています。しかしながらこのような指導の反響はかんばしくありません。患者さんに直接聞いたわけではありませんが、このようなときに心に浮かぶのは「そんなことわかっている」「もう聞き飽きた」というような言葉なのでしょうか。確かに高血圧の原因は図のように食塩、喫煙だけではありません
先日、日本医学会総会で大阪大学、公衆衛生学の野口緑先生の講演を聴講する機会がありました。ここで先生は高血圧のための生活習慣改善のために必要なことについて必要なポイントについて述べておられたことが大変参考になりました。先生はまず検査データをもとに説明し、「何が本人にとってのリスクなのか」「何が問題なのか」と言うリスクの認知をしてもらい、「何が自らのリスク関係する生活習慣なのか」「自分の場合どうすれば良いのか」というということを説明した上で、患者さんに現在の体の状態をイメージしていただき、他人事ではなく自分事として、自身の体の状態を理解していただくことが重要であるとしておられます。例えば頸動脈に動脈硬化のプラークという塊が付着していれば、血圧のダメージを受けている血管は頸動脈ということになります。あるいは安静のときには症状はないが、運動をすると胸が痛むときは、狭心症といって心臓を栄養している冠動脈という動脈の動脈硬化で運動時に充分な血流を確保できていない可能性があります。つまりこの場合は頸動脈、あるいは冠動脈が障害されている血管です。また生活習慣の観点からは、肥満があれば血液量が増加して血圧を上昇させますので、このような方には減量を勧めることが具体的な指導の一つとなります。このように今後の患者指導は検査データなど患者個々の体の状態に応じて、何が問題で自分はどうすればいいのかということをイメージできる指導を行うことが必要であると思います。
血圧が上昇するメカニズム
Vol.1.No.7 2008/10 レジデント 17頁一部改変
カテゴリー:お知らせ | 2023年8月6日