神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

新型コロナウイルス感染症の罹患後症状について

現在9月末にこの原稿を書いておりますが、最近でも医院に新型コロナウイルス感染症の方が受診されることは稀ではありません。またそれらの方々の中に、一定数の新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)を訴えられる方がおられますので、今回罹患後症状への注意点につき説明いたします。

 まず最近はやりのChatGPTで新型コロナウイルス感染症罹患後症状について調べてみました。新型コロナウイルス感染症の罹患後症状の定義として、感染したのちに感染性は消失したにもかかわらず、他の原因が明らかでなく、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復したのちに新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる出現する症状の全般を指すとしています。また代表的症状としては疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害などがあると記載されています。

 罹患後症状については多くは時間の経過とともに軽快してゆくとされていますが、中には症状が長期間持続する方もおられます。罹患後症状に対する治療としては、残念ながら現在のところ確立された治療法はありません。ただ当方で心掛けていることは、このような患者さんの訴えをまずしっかりと受け止めたうえで、ある程度有効とされる治療を根気よく行うようにしております。例えば罹患後症状に漢方薬が有効との記載があり、当院でも補中益気湯という漢方薬が有効であった経験があります。あるいは上咽頭刺激療法といって薬剤を上咽頭に塗布する治療法ですが、倦怠感、頭痛、注意障害が改善したと報告されています。この治療は耳鼻科でしかできませんので、ご希望があれば当院より紹介いたします。その他罹患後症状を訴えられる方の中に亜鉛の欠乏している場合があるため、亜鉛のサプリメントが有効との記載もあります。新型コロナウイルス感染症の罹患後症状の半数は軽微な症状ですが、専門的治療を必要とするのは感染者の10%程度とされております。そのため上記のような症状が長期間持続する場合には専門医療機関への紹介も考慮します。

 最後に新型コロナウイルス感染症後の暮らし方の注意点につき説明いたします。ある報告によれば新型コロナウイルス感染症の罹患後症状で感染時の症状が重いときは、罹患後症状として呼吸困難が多く、軽いときは倦怠感が多いとされています。特に後者の方は倦怠感を改善させようとして無理な運動やリハビリで症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。臨床上、患者が生活する上で最も大きな障害となるのは、通常の生活を困難とする強い倦怠感です(慢性疲労症候群)。特に注意すべきは病気になる前は問題にならなかった心身のストレス後に症状が悪化する現象があります.これを運動後の症状悪化(Post-Exertional Symptom Exacerbation略してPESE)といいます。PESEは労作の5~48時間後の起きる可能性があるため、生活でどの程度の負荷をかけてよいかを判断するには必ず負荷直後のみではなく必ず数日後まで観察する必要があります。このようなPESEはある報告では感染者の4割以上に達するとされており決して稀な現象ではありません。さらに当初PESEを認めない人も無理を重ねているうちにPESEが出るようになることがあるとされています。PESEを認める方は寝たきりとなるような重症の慢性疲労症候群のリスクがあると考えられています。このような重症の慢性疲労症候群は新型コロナウイルス感染症発症60日以内に約90%が起こるとされています。すなわち60日経過してから重症の慢性疲労症候群となる可能性は低いため、患者さんには発症から2か月間は無理をしないこと、仕事や勉強を注意深くセーブすること、無理な運動をしないように(ジムで筋トレなど)注意しています。最も大切なことは感染症罹患後症状として時として寝たきりの原因となる慢性疲労症候群を起こさないように、感染後2ヶ月間は決して無理をしないことだと思います。

以上、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状につき説明させていただきました。何かご質問がありましたら診察の時でも遠慮なく院長にお尋ねください。 

カテゴリー:お知らせ   |   2023年9月30日

    ページTOP