めざすべき医療
昔も今も現実と言うものは理想とはかけ離れたものです。患者さんに提供する
医療についても例外ではありません。勤務医だったころは毎日あまりに忙しく、
自分のやりたい医療ができないといつも考えていました。開業して、やっと
自分のやりたい医療ができると思いましたが、物事はそう簡単では
ありませんでした。
いざ開業してみると、患者さんのためを思って行った医療行為でも不満に
思われてしまうことがよくありました。
こちらの提供したい医療と患者さんの求める医療のすれ違いが
起こるわけです。開業した8年前は景気の悪さから、世の中を覆う経済的な
不安があり、受診を手控えるような動きがありました。そのため患者さんの
経済的な負担に対する、もっときめ細かい配慮が必要でした。
さらにひとりひとりの患者さんの価値観もさまざまです。例えば食事が
口から摂れなくなったとき、栄養を直接に胃に入れる胃ろうと言う
手術がありますが、患者さんや患者さんのご家族によっては、
このような治療を延命治療と考え拒否なさる方もおられます。
即ち、個々のいろいろな方々の価値観に配慮せずに、
自分の思いだけを押しつけるような医療は成功しないということです。
以上のようなことを言いますと、患者さんの言いなりになるのかと
言われそうですが決してそうではありません。例えますと、
医療の向かうべき先には3つの重要な力が働いていると思います。
まず第一に自分は何のために開業したのかという、自分の思い
、即ち理想というようなもの、第二に患者さんの価値観、
最後に世の中の流れです。
医療といえども世の中の風潮の範囲外にあるわけではありません。
これらの要素が、引っ張りあった着地点が、これからめざす
医療ではないかと思います。
当然のことですが、このような、めざすべき医療の着地点は
日々変わってきます。この着地点をめざして常に
自問自答するのが、我々開業医の重要な使命だと思います。
カテゴリー:院長のひとりごと | 2015年9月23日