神戸市東灘区(甲南山手) 内科・循環器内科 高血圧・糖尿病・高脂血症・心不全


つじもと内科・循環器内科

新型コロナウイルス感染症に立ち向かう

令和2年も年末になりましたが、まだまだ各地で感染者数の増加に歯止めがかかりません。この状況下でマスコミは重症病床がひっ迫しており、医療崩壊が近いと国民の危機感をあおるような論調が主流です。確かに新型コロナウイルス感染症は2類相当の感染症と位置付けされており、このような患者が入院するとき新型コロナ専用の病床を用意する必要があり、集中治療室や重症病床を占めることが多く、病院に大きな負担を与えています。
 この病床のひっ迫に対しては正直なところ有効な方策が思い浮かびません。しかしとりあえず病院の負担を軽減すべく日本医師会も診療所で発熱外来設置を募り、すくなくとも発熱患者の初期診療を行う方向に舵を切りました。当院でも10月より発熱外来を設け、発熱患者の診療にあたっています。また年末年始に各診療所が休診となることを見越し、東灘区医師会長の発案で、12月31日から1月3日まで六甲アイランド甲南病院で臨時の発熱外来を行う予定です。このような取り組みが少しでも病院の医療関係者の負担を軽減し、患者さんの安心につながればと思います。
 さて医療状況が厳しいと悲観的なことを書いてしまいましたが、悲観的なことばかりではありません。最近の知見ではコロナの第2波の致命率は第1波の時期に比べ低い可能性があることが分かってきました。この原因としてはPCR検査などの検査能力が向上により、早期に診断され治療を受けることができるようになったこと、後に述べる治療法の改善、高齢者の活動自粛などの要因が挙げられています。
 以前は呼吸状態の悪化した重症者には、人工呼吸器による呼吸管理が多く行われていました。しかし一旦、人工呼吸器につないでしまうと人工呼吸器関連肺炎を併発してしまい病状がさらに悪化する可能性がありました。そのため現在では炎症を抑えるデキサメサゾンという炎症を抑える薬を多くの医療機関が使用し、救命率が改善しています。
 次に予防についてですが、この病気の感染経路は、ほとんど飛沫感染とされていますのでマスクの有用性については皆さんご存じと思います。また皆さんも耳にたこができているかと思いますが、神戸市立医療センター中央市民病院感染症科黒田先生のご講演から、感染のリスクを高めやすい場面として飲酒を伴う懇親会、狭い空間での集団生活、大人数や深夜に及ぶ飲酒、アスレチッククラブなどでの激しい呼吸を伴う運動、大人数やマスクなしでの会話、屋外での活動前後、仕事後の休憩室などが挙げられています。これらの注意点については、皆さんも充分注意されているかと思いますが、人間がふと無防備になる瞬間がウイルスにつけもまれる隙となります。例えば友達と楽しくお酒を飲んでいて、ついつい声が大きくなってしまい、いつの間にか飲食店で長居してしまうということが感染リスクを高めてしまいます。要はマスク、ソーシャルディスタンスなど当たり前のことを当たり前に徹底して行うことが重要です。
 以上、新型コロナウイルス感染症の現状としては、医療機関の負担の増大など心配な要素はありますが、検査能力の向上により早期診断、早期治療が可能となり致命率の改善につながっているなどの良いニュースもあります。また感染経路はほとんど飛沫感染であることも分かっており、今年初めのような得体のしれない感染症との印象は薄れてきています。メディアも新聞の売り上げを上げたり、視聴率を取るために病床が足りない、医療崩壊だなどのニュースなどと悲観的な面のみを強調しますが、この厄介なウイルスに対する対処方法も最近、少しずつ分かってきたというような明るいニュースも是非取り上げて欲しいものです。

カテゴリー:お知らせ   |   2021年1月2日

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